012) ヨーロッパの火薬庫に火薬を入れたのは誰なのか?
010)では、
東側社会とその崩壊で翻弄されたバルカン諸国の人たち
011)では
その前、第二世界大戦の前のバルカン諸国のイメージ
について、語ってきた(つもり)
さまざまな民族、宗教が入り乱れるバルカン半島
バルカン諸国、あるいは南東欧諸国というのは、
ギリシア、ブルガリア、ルーマニア、アルバニア
旧ユーゴスラヴィアのセルビア、クロアチア、スロヴェニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、北マケドニア、コソボ
ただし、スロヴェニアやクロアチアが抜けたり、トルコが入ったり……多少の増減はある
これらバルカン諸国のイメージといえば、
歴史の教科書に必ず書かれる、そう
「ヨーロッパの火薬庫」
第一次世界大戦の勃発の舞台(サラエボ事件)になり
第二次世界大戦では独伊ソという大国に翻弄される
そして戦後は多くソ連圏に位置し、安定したかに見えたが、
冷戦の崩壊後、独立、分離、内戦、独立、分離……で、わけわかめ……
やはり、芦田均の言う通り「呪われたバルカン」なのだろうか?
ぼくは専門家ではないし、
ここで事細かくバルカン諸国の歴史や現状を語ることはただ長くなるだけだ
なので、関係する本を紹介することでこの話をまとめたいとは思う
その前に一つだけ
(こういうことをやるから長くなるのだが)
今回本を読んで、知ったこと、今まで気づいていなかったことは
(考えてみれば、当たり前といえば当たり前なのだが)
「バルカン」という呼称は歴史的であるということ
バルカン諸国、バルカン半島、バルカン地域
といういい方がなされるようになったのは、長くて、ここ200年ぐらい
それまでは「ヨーロッパ・トルコ」といわれていたということだ
オスマン帝国に支配された500年
地域社会においては
○○人、××人という考え方はほとんど認識されることはなく
正教徒かムスリムかというカテゴリーでしか
(自己認識も含め)ほとんど認識されていなかった
村々では、違う宗教、違う言葉をしゃべる人々が普通に共存していたのだ
ところが
ロシア帝国が、ハプスブルク帝国が、バルカン半島に進出し始める
遅れた、野蛮なオスマン帝国から人々を開放するために
そして、ある日、村々で
俺(たち)とお前(たち)は違う、
話している言葉違うから、神様が違うから
という意識が生まれる
この意識が生まれたその日から
バルカン半島の人々の苦悩が始まったのだ
さて、今回、ぼくが取り急ぎ読んだ本は以下の三冊だ
一冊目は、前から言及している
「バルカン 」 (岩波新書 旧赤版) 芦田 均 (1939)
芦田均は外交官を経て、政治家
日本国憲法制定過程で重要な役割を果たし(芦田修正で有名)
のちに総理大臣
彼の「呪われたバルカン」との記述を繰り返してきたが、
芦田均の名誉のために、付け加えておく
バルカン半島の(当時の)国々の歴史・現状を語った後の章は「バルカン人のバルカン」であり
大国の後ろ盾のない、自律的なバルカン諸国の地域協力=1934年のバルカン協商を高く評価している
二冊目は……
あれ?コソボって独立しているの?してないの?
北マケドニアって何よ?その名前
そう思ったりしません?
21世紀に入ってもバルカン諸国の動きは早くてついていけない!
そんなあなたに
「図説 バルカンの歴史 増補四訂新装版 」(ふくろうの本) 柴宣弘 (2019)
2001年に初版が出て、以来こまめに増補改訂をしてくれる偉大な本
図版が多いので、読みやすいと思うか、読みにくいと思うか、そこがわかれそう
三冊目
「バルカン 『ヨーロッパの火薬庫』の歴史」(中公新書) マーク・マゾワー (2017)
翻訳は17年と新しいが、原著は2000年なので少し古い本になるが、
今回、この本に多くのことを教えてもらった
この本に特徴的なのは、各国別の記述をせず、バルカン半島全体の歴史として扱っていること
そして、オスマン帝国時代の記述が多いことだ
逆に言えば、第一次世界大戦後~冷戦期にかけては少しわかりにくいのが、弱点
補足的な本を読む必要があるかも
さらに、オスマン帝国全体の衰亡史が読みたいと思った今日この頃
オスマン帝国拡大期、あるいは各国史はあるのだけど……
また、本を買わないといけないなあ
そして、増える積読……
トホホ