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まずは読んだ本の紹介……そして広がる世界……だといいなあ

019) 「漢字伝来」を読む(短め路線をめざして!)

「漢字伝来」 (岩波新書) 大島 正二 (2006年)

 


最近読んだ本、たぶん再読


文字を持たない日本列島の人々が
中華文明の漢字に出会い、それを受容し、
漢字を使って日本語を書き表すことができるようになり、
さらに、片仮名、平仮名を発明し、
現在のような仮名漢字混ざり文として記述できるようになる話


当たり前の話であるが、
漢字は中国語を表記するために作られた文字であり
本来、日本語を表記するためのものではない


そこで、渡来人を中心として
(主に外交文書を)漢文として書くことから、まずは始まり


日本語の固有名詞を漢字で書くことの必要性から
漢字を仮借(宛て字)することから、
日本語の漢字表記が始まる


さらに漢文を日本語として読む方法が模索され
漢字を訓読み(大和言葉の意味で読む)し、
中国語の文法で書かれている漢文を
日本語の文法で読む方法(返り点など)が生まれる(漢文訓読)


文を音として読みあげる必要がある祝詞宣命(読みあげる命令)
逆に音を文として書きあげようとした和歌


読む人も書く人も同じ日本語を使う人のための文章が普及するために
そう、万葉仮名が生まれる


この万葉仮名の表記の多彩なこと!
たとえば、本書であげられている歌を一つ取れば……


潮左為二  五十等児乃嶋辺  榜船荷    妹乗良六鹿   荒嶋廻乎
しほさゐに いらごのしまへ  こぐふねに  いものるらむか あらきしまみを


潮騒の中で 伊良虞の島辺を 漕ぐ船に 彼女も乗っていることだろうか 荒い島の周りを) 万葉集 巻一・四ニ

 

www.manyoshu-ichiran.net

 

この歌には九九の2×5=10が隠されている


「算法少女」にも万葉集に九九が載っているとの話題があったのを思い出す
ああ、これなのだなあっと
九九も万葉仮名同様に古いという話

 

tankob-jisan.hatenadiary.jp

「算法少女」については、上を参照のこと

 

この後、片仮名、平仮名の発明で漢字の日本語化は完成するのだが
そこは割愛しよう

 

 

日本以外に、中華文明の周辺文明には、
朝鮮半島やヴェトナム、そして北方の遊牧諸国家があるわけだが、
それら諸文明が漢字とどう向かい合ったか
ということも、この「漢字伝来」には、簡単にではあるが、のべられている


西方由来のアラム文字系が使われた北方遊牧民は別として
ハングルや、ヴェトナムの(今は使われてない)チュノムに比べて
漢字の日本語化が早かったのは、なぜだろうか?


まず、一つには、音声言語としての日本語が母音数が少ないなど、単純なことだろう
宛て字をする際に音声数が少ないことは有利に働くに違いない


そして、文明論的に考えると
日本列島が中華大陸と適度の距離にあり、
文化の受容が遅れがち、間接的であったことが大きい


中華文明への接触が遅く、間接的だったことは
口承文学としての和歌の発達を独自に進めることができた


もしも、和歌の発達がなければ、
日本語を表記しようという意識がどこまで生れていただろうか?
漢文、漢詩中心の創作活動になっていた可能性がたかいと
ぼくは思うのだが、果たしてどうだろうか?


中華文明の最も辺境にあったことの果実と
古代の人の創意工夫とその努力に
感謝の念を!!!!

 

今回は固有名詞以外のカタカナ語を使ってないのだ
気づきました?

 


どうしても、ぼくの文章は無駄に長くなり、
さらに調べ物で書くの時間がかかってしまう
すこしは短めの路線を……と思ったのだが、
やはりこのぐらいの長さになってしまうのだ

 

困ったもんだ……