過去との対話を楽しめる…そんな人間でありたい

まずは読んだ本の紹介……そして広がる世界……だといいなあ

026) 初詣に行きましたか?

あけましておめでとうございます
今年も少しずつブログを書いていきたいと思っています


お正月、初詣に行きましたか?
コロナで去年行けなかった人が多く、今年は二年ぶりとばかりに行った人も多いのでは?
散歩途中に見かけた、そこそこ大きい神社はどこもすごい人の列!
「日本人」(こういうカテゴライズは正しくはないが、便利なのでw)は初詣が好きなんだなあ


ちなみに、ぼくは今のところ、初詣をしてない
人ごみ嫌いだし、並ぶの嫌いだし……天邪鬼だから


さて、ここで、初詣に関する問題
①初詣は、明治神宮成田山新勝寺川崎大師平間寺……やはり人が集まるところ!
②初詣は、氏神様、やはり近所の神社に参拝する!
どちらが由緒正しい初詣なのだろうか?


実際には①をしたいけど、やっぱり近くの②という人が多いだろうとは思うが……

 

ありていに答えを言えば、
①に近いけど、②でもまったく問題はない
というか、どこに詣でようが、どうでもいい
そういう気軽さこそ初詣なのだ

 

①に近いといった理由
川崎大師平間寺成田山新勝寺に参拝することが初詣の始まりだから
初詣というと一般に神社だけど、この二つは寺院なのもオリジンたるゆえんだろう


初詣の始まり?


そう、初詣という風習は古いものではない
近代(明治中期)以降生れたものであって、厳密な意味では伝統文化ではない
むしろ近代だからこそできた文化なのである


初詣は鉄道会社が作り上げた文化なのだから

 

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川崎大師駅


それを僕に教えてくれたのは以下の本である

 

「鉄道が変えた社寺参詣-初詣は鉄道とともに生まれ育った」 (交通新聞社新書) 平山 昇 (2012年)


この本は僕の好奇心をとても満足させてくれた、よい本である


前近代までは、正月には恵方詣が行われていた
居住地から恵方の方角の社寺に参拝するのである


それに対して明治中期以降鉄道網の発達により
気軽に郊外を散策し、かつ名利を参拝できるになると
恵方や初縁日にこだわらない行楽的な参拝が生まれてくる


しかも、乗降客を増やすために、鉄道会社はあの手この手
とくに、複数の鉄道が乗り入れるところは、会社間での競争が行われる


たとえば
川崎大師平間寺は、国鉄(JR)と京急
成田山新勝寺は、国鉄(JR)と京成が顧客誘致合戦を繰り広げた
(正確に言うと、「国鉄」となったのは戦後)


恵方の方角は毎年変わるため、恵方詣だと数年に一度しか当たらない
恵方じゃない年は、乗降客が減ってしまう恐れがある
だったら「正月にどこかにお参りする」というあいまいな初詣の方が使いやすい


「初詣は“正月にどこかにお参りする”という以外には特に中身がない曖味な言葉であり、その曖味さゆえに鉄道会社はこれを毎年の宣伝に活用するようになった。まさに『ことばに意味が乏しいことは、人がそれを使わない理由になるよりも、ある場合にはかえって、使う理由になる』(柳父章)という名言どおりである。」(「鉄道が変えた社寺参詣-初詣は鉄道とともに生まれ育った」 p129)


柳父章は、かつて、「自然」について語った時に、翻訳語のカセット効果というワードで語った

tankob-jisan.hatenadiary.jp


恵方詣は、鉄道会社間の宣伝競争の結果、初詣という言葉との競争に負ける
言葉の中身=参拝の意味がないからこそ、初詣は「伝統文化」になったのだ

 初詣が生まれ育った過程については、これ以上の詳細は割愛する
本書「鉄道が変えた社寺参詣-初詣は鉄道とともに生まれ育った」 を読んでいただければ幸いである


なかでも、
福男選びで有名な西宮神社の十日えびすも
現在の新暦1月10日なのは、事実上、阪神電車が作り上げたもので、
西宮神社の意向と若干異なっていた

 

この経緯が詳しく語られている部分は
鉄道会社の意向と、神社側の意向が同床異夢のところもあって非常に面白い

 

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鉄道会社の熾烈な競争と、宣伝への努力が初詣を生み育てたわけであるが、
この鉄道の力とともに、新聞の力も思い起こさせる


このメディア社会の成立について、
電子本箱をのぞいてみたところ、ぼくは直接的な本をもっていないようだ


今後、メディア論の本も手に入れて読んでみようと思うが
取り急ぎ、今回の話に参考になるべきもので、ぼくが持っているものは、

 

日清戦争─『国民』の誕生」(講談社現代新書) 佐谷 眞木人 (2009年)

 

だと思われる。


次回は、この本を読みなおすつもり……一度読んでいるけど、詳細は忘れちゃったw