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まずは読んだ本の紹介……そして広がる世界……だといいなあ

011) 呪われたバルカン半島??

バルカン超特急(The Lady Vanishes)

 

バルカン超特急(字幕版)

バルカン超特急(字幕版)

  • マーガレット・ロックウッド
Amazon

 

これは、イギリスで製作された最後のヒッチコック映画
この後、ヒッチコックはハリウッドで映画を作ることになる

 

戦争間近のヨーロッパ、そのヨーロッパの架空の国バンドリカ
山奥のホテル、雪で鉄道が止まったために、多く人が足止めされる
クリケット狂のイギリス人男性二人、ダブル不倫カップル、結婚を控える若い女性(アイリス)、元家庭教師の老婦人(ミス・フロイ)
民族舞踊をコピーするクラリネット奏者(ギルバート)
ミス・フロイは窓下のギターの音色を楽しそうに聴くのだが、上の階の民族舞踊とクラリネットでうるさくなる
アイリスがギルバートに文句を言いに行くと、そこですったもんだ
そのドタバタが終わるころ、外のギター奏者は何もかもに殺される……

 

次の日、列車が運行され、みんなが乗り込む
その寸前、ミス・フロイをねらったと思われる植木鉢がアイリスに当たり脳震盪を起こす
朦朧とするアイリスと彼女を介抱するミス・フロイが食堂車でお茶を飲み、コンパートメントに戻る
「私はパズルをやってるから、少し寝なさい」ミス・フロイはアイリスにやさしく言う

 

ところが、
アイリスが起きてみると、目の前のミス・フロイがいない!
コンパートメントのほかの乗客もそんな老婦人を知らないという
ほかの乗客もみな知らないと答えるし、
また、食堂車の伝票もお茶一杯(つまり、アイリス分)だけになっているのだ

 

そう、老婦人が消えてしまったのだ(The Lady Vanishes!)

 

乗り合わせた医者は脳震盪のせいで記憶障害が起こり、ありもない記憶が生じていると診断するが、
ミス・フロイの実在を信じるアイリスはギルバートと、消えてしまったミス・フロイを探し始める……

 

ヒッチコック映画だから、
ミス・フロイが消えた理由、そしてそれはどうやってかなされたのか
という謎解きは意外と早く解明される


そのうえで
諜報活動とその情報を本国イギリスへと持ち帰ろうとする努力と
それを阻止しようとするバンドリカ軍隊との対決へとストーリーは進むのである


最初のホテルのシーンが若干冗漫の感があるけど、
登場人物の性格付けと、コメディ部分と思えば、楽しくみられる

 

後半の鉄道のシーンは小さな伏線の貼り方はやはりうまい
また、謎解きはあっさりと解明するので、
逆に視聴者は、アイリスとギルバートがどうなるか、ハラハラできる

 

まさにヒッチコック調!
楽しい映画!


めでたしめでたし


……
ちょっとまって

 

バルカン超特急

この邦題は一体どこから?
そもそも、どこがバルカンなんだろ?

 

原作のWikipediaを見てみると

 

en.wikipedia.org

 

 a small hotel in ‘a remote corner of Europe’
ヨーロッパの辺境のホテルとある
ヨーロッパの辺境が舞台……

 

辺境、山奥、雪崩で鉄道が止まり
大国のスパイが暗躍する

 

これがバンドリカの、つまりはバルカン半島の国々のイメージなのだ
ちなみに原作は1936年に、映画は1938年に作られている

 

そういえば、
あの有名な「オリエント急行の殺人」でも
ユーゴスラヴィアの山奥でオリエント急行が雪で立ち往生する


アメリカ人のハバード夫人は列車が立ち往生したときに以下のように言うのだ

 

「『それにしても、ここはなんという国ですの』とミセズ・ハバードが涙声できいた。
ユーゴスラヴィアだと教えられて彼女は言った。
『まあ! バルカン半島の国ですのね。じゃ、どうしようもありませんわ』」
(「オリエント急行の殺人」(ハヤカワ・ミステリ文庫) アガサ・クリスティー 中村能三訳(1978) p56)

 

(ぼくの持っているのは、↑より古い版)

 

脱線するが、映画「オリエント急行殺人事件」(1974)のハバード夫人=ローレン・バコールのかっこいいこと!
アルバート・フィニーの嫌な奴=ポアロも嫌いじゃない(ちょっとやりすぎ?)

 

 

バルカン半島、雪で鉄道が止まるところから始まるサスペンス……
バルカン超特急」の日本での公開は38年の製作からすごく遅れ、1976年

 

ということは、
74年の「オリエント急行殺人事件」から邦題名をいただいたんだろうなあ

 


上記のようにこの映画の製作は1938年
ヨーロッパに戦争の危険が近づいてきた時である

 

そして、1939年、たぶん日本で最初のバルカン半島の国々をテーマにした本
「バルカン」(岩波新書 旧赤版)を書いた芦田均
第一章第一節の題名を「呪われたバルカン」とするのだ

 

 

どうしようもないバルカン半島の国

呪われたバルカン……

 

……以下、次回!w