過去との対話を楽しめる…そんな人間でありたい

まずは読んだ本の紹介……そして広がる世界……だといいなあ

024) 世界史を学びたい人へ……「市民のための世界史」

今どきは、歴史を学びたい・知りたいと思ったら
YouTubeの動画を見るのだろうか?

 

ぼくもYouTubeを好きなので、結構いろいろとみるが
記録映画・ドキュメンタリーなどの一部を除いて、
歴史ものの動画を見ることはたぶんないだろう


仮に「そんなこと知ってるわ!」ということばかりだったら、
それこそ動画視聴の時間がもったいないし、
そこで語られる言葉が「事実」であるか、検証がほぼできないからである


これは動画だけでなく、Wikipediaにしろ、一般的な書物にしろ同じである
まともな文献目録がないものは、信用度がやはり下がる


歴史は科学であるか?という問いについて
「イエス」とぼくは大きくうなづくことはできない


だが、科学的であろうとする姿勢は必須であり
それがないものは「歴史」とは言えず「ファンタジー」に過ぎない
(この言い方だと、ファンタジーがあたかも下位であるかのように誤解されてしまうね、申し訳ない)


むろん、このブログでも同じことで
本当は、バカ話も含め、もっともっと軽め路線で行きたいのであるが
やはり日常会話と違って、軽い気持ちで「嘘」をつくことはできない
(おまえは日常的にうそをついているのか、というツッコミ歓迎)
なので、どうしても「お勉強しました~」という文章になってしまう


不特定多数……不特定少数の人に伝えるのだからこそ
文責というものが問われると思っているからである


ぼくのことを知らないあなたが
ぼくが書いた間違いを信じてしまったら
ぼくはどうやって責任をとればいいのだろうか?

 


以上、まえふりを終わりにして
今回ぼくが紹介する本は
「市民のための世界史」 大阪大学歴史教育研究会 編 大阪大学出版会 (2014年)

 


「この本は大学教養課程の世界史教科書として編集されたものであり、大学の新入生をおもな想定読者としている。(中略)必修であるはずの高校世界史について、高校時代に系統的な知識や考え方を学べなかった学生たちである。」(p1-2)


つまり、以下のような人におすすめなのだ


・大学教養課程レベルの世界史を学びたい人に(この本の想定読者)
・大学受験生の副読本として(世界の全体像を頭に入れたり、論述問題用に)
歴史学を学ぼうとする初学者に、史学概論として
・世界史全体像を知ってみたい読書人に
・今の歴史学がどのようなもので、何を問題にしているかを知りたい人に


現状、世界史の教科書的概説本として、これ以上の本をぼくはしらない
いろいろ、探してきて、ようやく見つけた一冊だといえる


巻末の索引等も入れて、たった311ページ
これだけで、世界史の全体像が描かれる
それも、ほぼ最新の歴史学の知見を含めての、だ


世界史をかつて学んだみなさん、
索引から抜き出した以下の用語を見て
今の世界史との違いを感じてみてほしい

(以下のワードにどれだけはてなリンクが貼られるかな)


アジア間(アジア域内)貿易
イスラーム商業ネットワーク
雁行的発展
環大西洋革命
近代世界システム
グレート・ゲーム
港市国家
コロンブス交換
ジェントルマン資本家
自由貿易帝国主義
主権国家(体制)
中央ユーラシア型国家
中世温暖期
長期の16世紀
輸入代替工業
4つの口(江戸幕府の)
14世紀の危機
人口増加(近世中国)
財政軍事国家


ぼくはこれらの用語を見るだけで、わくわくするけど
みなさんはいかがだろうか


むろん、この本にもたくさんの弱点があって、
「『暗記事項の羅列』はいっさいしない」(p2)はすばらしいのであるが、
やはり、あまりにも抜けていることが多いと思う


プラトンをはじめとして古代ギリシアの科学、哲学をやはり無視するのやりすぎだと思う
ゼロの発見、その他、現代につながる古代文明での諸発見もほとんど描かれない


中央ヨーロッパの記述がほとんどないことや
ロベスピエール(フランス大革命)が出てこないのに、トウサン・ルーヴェルチュール(ハイチ革命)が出てくることに違和感があるのは、ぼくの頭が古すぎるのだろうか???


細かいところに不満はあるとしても、
歴史を学ぶとはどういうことか、この本は教えてくれるだろう


たとえば、本文の記述だけでなく
世界史像を作るためのコラムは歴史への興味を増やし
読者への「問いかけ」「課題」は歴史を考える力を養ってくる


たとえば、こんな課題がある
モンゴル帝国と現代のアメリカ合衆国との共通点について、政治権力(リーダーの選ばれ方や権力の構造)と社会・文化のしくみ、軍事と経済のあり方や両者の関係などを中心に整理せよ。」(p90)


クリルタイと(間接的な)大統領選挙
軍事商業国家と軍産複合体

……
………
むずかしい


ほんと
歴史を学ぶ力を養える素晴らしい本ですよ、この本は!


「おすすめ」の三百万唱!

 

 

 

 

 

以下、興味のある方へ、今回紹介した本書の目次

序章 なぜ世界史を学ぶのか
  1.21世紀の世界で歴史を学ぶ意味 
  2.世界史の入り口で
第1章 古代文明・古代帝国と地域世界の形成
  1.文明の誕生と国家の出現
  2.遠距離の移動と交流
  3.諸地域世界の成立と古代帝国の栄華
  4.古代帝国の解体と紀元後3~ 5世紀のユーラシア動乱
第2章 地域世界の再編
  1.中央ユーラシアの発展と東アジアの再編
  2.「唐宋変革」と「中央ユーラシア型国家」の時代
  3.ユーラシア西方の変動と新しい地域世界の成立
  4.ユーラシア南方の変容
第3章 海陸の交流とモンゴル帝国
  1.海陸のネットワークの連鎖
  2.モンゴル帝国アフロ・ユーラシアの「グローバル化
  3.14世紀の危機と大崩壊
  4.モンゴルの遺産・記憶とその後のユーラシア
第4章 近世世界のはじまり
  1.明を中心とする国際秩序
  2.西アジア・南アジアの近世帝国
  3ルネサンスと西ヨーロッパ「近代」の胎動
第5章 大航海時代
  1.ヨーロッパ人の世界進出と「近代世界システム」の形成
  2.銀と火器による東アジアの激動
  3.17世紀の全般的危機
第6章 アジア伝統社会の成熟
  1.東アジア諸国の「鎖国
  2.18世紀東アジア諸国の成熟と日中の大分岐
  3.東南アジア・インド洋世界の変容
第7章 ヨーロッパの奇跡
  1.イギリスとフランスの覇権争奪
  2.イギリスの工業化
  3.環大西洋革命の展開 151
第8章 近代化の広がり
  1.「パクス・プリタニカ」の成立
  2.欧米の国民国家建設と工業化
  3.近代化と大衆社会の萌芽
第9章 「ウエスタン・インパクト」とアジアの苦悩
  1.イスラーム世界の苦悩
  2.南アジアの植民地化
  3.東南アジアの植民地時代
  4.東アジアの衝撃と模索
  5.「アジア間貿易」とアジアの工業化
第10章 帝国主義とアジアのナショナリズム
  1.帝国主義第一次世界大戦
  2.アジアのナショナリズム
第11章 第二次世界大戦とアジア太平洋戦争
  1.「戦間期」の繁栄と世界恐慌
  2.日中「15年戦争
  3.第二次世界大戦とアジア太平洋戦争
第12章 冷戦と民族独立の時代
  1.戦後の国際秩序と「冷戦」「熱戦」
  2.脱植民地化と新興国国民国家建設
  3.「平和共存」と高度経済成長
  4.ベトナム戦争アメリカの覇権の動揺
  5.中ソ対立と社会主義の行き詰まり
第13章 現代世界の光と影
  1.新自由主義と冷戦の終結
  2.開発と民主化
  3.イスラームの復興と挑戦
  4.グローバル化と反グローバル化
終章 どのように世界史を学ぶか
  1.歴史学とはどんな学問か、どのように発展してきたか
  2.世界史をさらに学びたい人のために